【楊德昌回顧展】僕は、あの暗室の中にいたんだ。

【2023年9月3日 台北市立美術館】

 先述のように、台風の上陸に怯えながら陳明珠のクラウドファンディングイベントの開催の可否を待つ合間をみながら、台北市立美術館へ。
 その日は「客家」をテーマに行動しようと思っていたので、楊德昌(エドワード・ヤン)監督の回顧展へ行こうと決めていた。どうしても音楽を中心に書くことが多いが、僕は元・映画少年だったので、気になっていた映画監督の世界観を読み取る企画は、どうしても手を止めてしまう。台湾映画の巨匠である楊徳昌と侯孝賢はともに客家人というのも、何かのヒントになるような気がしていた。 

 そんな期待を胸に、台北市立美術館の『一一重構:楊德昌 A One and A Two: Edward Yang Retrospective』へ足を進める。


 僕の思考回路に深い傷をつけ、未だに癒えない楊德昌監督作品がある。
 『恐怖分子』だ。
 その重要な場面で登場するのが、暗室内での写真だ。

 風に揺れる何枚もの印画紙を前に、泣いていた。

 僕は、あの暗室の中にいたんだ。

 映画のことを一から十まで話すと、また「我が胸中の浜村淳」が動き出すので、印象に残ったこの場所のみに留めておこう。多くの人にとっての楊德昌監督作品は他にあるだろうし、その楽しみを奪う気はない。

 30NTD(150円)を握りしめて、台北に飛べば、その場所に行ける。

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